多忙につきブログを書く時間を全く逸しておりました。すみません。
書く時間はなくとも、好奇心を持って世の中に接している以上、ネタは増えて行きます。
硫黄島を旅したことに端を発する平家物語、隠岐の島の後鳥羽上皇、去年から持ち越している沖縄真栄平の南北の塔、アイヌのクナシリ・メナシの反乱、ウルミ事変、台湾の黄金神社と久原房之介、福島でのIAEA総会等、今年は大テーマが多く、大いに勉強させていただきました。
特に、平家物語については、硫黄島、佐賀喜瀬庄、赤間神宮、京都青蓮院とゆかりの場所の取材を重ねて行くうちに、物語のプロデューサーであった平安時代の天台僧・慈円の意図と陰謀が見え出し、千年以上を経た発見に我ながら驚愕を覚えました。いずれブログにまとめたいです。その影響で音楽観戦も平家物語関係のイベントをいくつか見ました。
【番外1】は、国立劇場で観た歌舞伎「俊寛」。芝居は評価不能ですが、義太夫の長唄が凄まじかった。今さらながら、小生にとっては今後追求する価値のある音楽です。
【番外2】は、奈良県立美術館でのずばり琵琶による平家物語の演奏。ちょうど兵藤裕己著「琵琶法師」を読んでいたため日本の芸能のルーツについても考察することができました。おもしろいです。
【番外3】は、東京自由学園で行われた中東の伝統楽器ウードが西に行ってギターに東に行って琵琶になるという楽器と音楽の歴史を追う企画。お気に入りのウード奏者常味氏の演奏が、西洋クラッシック歌手とのコラボで珍妙キテレツに。今年のワースト1ライブでした。
【番外1】
【番外2】
【番外3】
沖縄関係では、11月に行われた2つの音楽イベントが印象的でした。うるま市での小那覇舞天を偲ぶ「ぬくぬぐすーじ(命の御祝事)音楽祭」【番外4】と、読谷村での比嘉恒敏氏を偲ぶ「艦砲の喰ぇーぬくさー(艦砲射撃の喰い残し)」【番外5】。沖縄でのあの忌まわしい戦争は決して風化していません。沖縄固有の悲しい歴史と、対照的にこの地で奏でられる国境を問わない多様な音楽性に打ちのめされた2つのイベントでした。
【番外4】
【番外5】
ここ2年奄美に行くことも多くなって来ました。
【番外6】は、島唄の世界で将来を嘱望されながら、食べるために喜界島を出てしまった安田博樹さん。たまたま郷帰りした時に遭遇。低音が優しい円熟の歌声でした。
【番外7】は、同じく喜界島出身で、今は奄美大島在住の竹島信一さん。昨年のベスト10にも入っていましたが、1年ぶりに会いに行くと、お酒で体を壊されて痛々しい姿に。回復して再び凄みのある歌を聴かせてほしいものです。
【番外6】
【番外7】
一線から退いて行く人もあれば、音楽で一旗上げようと頑張っている若者達の輝きも小生は好きです。
【番外8】は、博多駅前で見た「Candy box」。キャッチな楽曲に、そこそこの歌に、好感の持てるミキちゃんのキャラクター。運が良ければ、こういうのが当たるのでしょうが、耳の肥えたオジサンには少し物足りない。
【番外9】は、岐阜県のめいほう高原秋祭りで見た山口沙織さん。密度の高い個性的な声が衝撃的。楽曲が凡庸でなければ、UAみたいな存在になれるのに。
【番外10】は、東京八重洲タワーレコードのインストアライブで見たブラジルの歌姫Tulipa Ruiz。このライブはボロボロでしたが、これがきっかけで聴いた彼女の2010年のデビューアルバムが、今年一番のお気に入りCDになりました。Candy boxの予定調和の世界とは全く違うハッとさせる展開の楽曲とTulipaのボーカル。Rolling Stone誌が選ぶ同年のブラジルベストアルバムも納得。
【番外8】
【番外9】
【番外10】
楽曲と相まって、ミュージシャンはやはり個性ですね。
それでは、2012年小生のライブ観戦ベスト10の発表。
【1位】
森崎ベラ
11月20日
@東京・四谷・BLUE HEAT
9月にソウルミュージックのイベントで初めて観てぶっ飛び。
歌の技巧も素晴らしいが、どこを切っても真っ黒なソウル。ただ者でない。追う必要あり。
この日は、Ds岡地(元ボガンボス)やB小川ヒロ(元クリエイション)も好サポート。
【2位】
頤和園のミュージシャン達
6月30日
@中国・北京・頤和園(イワエン)
世界遺産の庭園公園を歩くと、そこかしこで素人音楽家達が歌い演奏している。多様な民族性(大半は漢民族ですが)と悠久の歴史を感じさせる目くるめく世界。山全体に団員がいて山が唸りを上げるかのような「心逢心合唱団」の演奏は、渋さ知らズのような音楽性で、エネルギーはその1000倍。
【3位】
与那覇歩
11月11日
@沖縄・那覇・金城
ギターサポートの謝花綾乃脱退後、久しぶりに見た与那覇歩、早田恵美のデュオ。
この日は和音楽器がなくとも、沖縄民謡を中心にじっくり聴かせた。その後の関西ライブでは、ストロングプレーのあっちー氏(ごもく)をギターサポートに従え、ロック系の新曲を連発。適応力の高さを見せつけマンネリを打破。歌の上手さ×破壊力は相変わらずで、沖縄の若手No1。
【4位】
本田珠也/力武誠
1月22日
@東京・西荻・アケタの店
絨毯爆撃のごとき爆音ドラムデュオ。あまりの音数・音圧に聴く者は思考麻痺。壮絶の一言。さらに欲張って、本田珠也+吉田達也を観てみたい。
【5位】
Perfume
2月4日
@新潟市・朱鷺メッセ
車で出かけたものの大雪で深夜にスタック。吹雪の中脱出に1時間。なんとか会場の駐車場にたどり着いて車の外に出ると、息も出来ないくらいの暴風。軽装だったので凍死しかけた。
会場には若者が多いけれど、70年代ジャーマンテクノの系譜で、マニアのオジサンの音楽ではないかと毎回思う次第。ダラダラのMCは勘弁してほしい。
【6位】
郡上踊り
8月26日
@岐阜・郡上八幡・旧庁舎記念館前広場
徹夜踊りが有名な郡上踊り。徹夜の日ではなかったけれど、数千人が集まってトランス状態。聞きしに勝る圧巻の図。そして、ジャパニーズエスニックグルーブの強烈な演奏と入魂の歌。音楽だけでも素晴らしい。
【7位】
Bondage Fruit
1月25日
@東京・秋葉原・Club Goodman
鬼怒無月が率いる略称ボンフル、いつ見ても外れなし。編成からして「太陽と戦慄」の頃のクリムゾンを意識しているのは間違いないが、この日はアパラチア山脈のバイオリン音楽に話が及ぶなど、ジャンルを軽く超越する普遍性が彼らの音楽性の根底をなしている。Vln勝井祐二は最近反基地活動をしているようで見直した。ヒイキにしましょ。
【8位】
鴇田望トリオ(Tokita Nozomi Trio)
9月4日
@宮城・仙台・定禅寺ストリートジャズフェスティバル
20年以上続いている有名なジャズフェスを初観戦。ジャズと銘打ちながら玉石混淆で、目の前の演奏に飽きたら隣に行けばよく、連続して存分に楽しめた。
全員若いメンバーの鴇田望トリオは、出音は荒削りながら、繊細な感性と挑戦的なスピリット満載で、一番長い時間足を停めた。
【9位】
バンド名不明(台湾)
7月15日
@台湾・基隆(Keelon)港
基隆港の広場で演奏していたKb(打ち込み)+Voの二人組。小生が泊まったホテルの前で4時間以上も大音量で演奏したエネルギーに感服。B級歌謡どころかC級、D級、E級の歌謡曲風を連続してやられると、妙にプログレッシブに聴こえてくる。楽しかった。
【10位】
宝塚歌劇団宙組公演「銀河英雄伝説」
10月21日
東京・有楽町・東京宝塚劇場
音楽的にもミュージカルとしても受け入れがたい。一歩間違うとワースト番付に転落するところであるが、中央2列目の観戦で、美女達が近づいて来るたびにドキドキした。ああ、これが宝塚の楽しみ方なんだと納得してベスト10入り。バカらしいが立派なエンターテインメント。
今年のシメとして、昨年に続き福島について言及しておきます。
今年は沖縄よりも足を運んだ福島。都度福島市や郡山のライブハウスに行きました。
3月に福島の若いミュージシャン達が集まって、福島ロッカーズ名義で「希望の唄」というシングルCDを出しました。動画はYouTubeにアップされていて、小生にとっても今なお毎週のように見ている動画で、その歌詞を聴くたびに胸が締めつけられます。
「空を見上げたら 涙が出た
これからどれくらい僕らは
恐れて生きて行けばいいの?
この胸を飛び抜く希望がほしい
もっと自然に自由に生きたい」
炉心が大気に露出したままなすすべがない原子炉。放射能で汚れた空、海、そして彼らの故郷。
希望の唄というタイトルですが、歌詞の「希望がほしい」とは、「今希望がない」ということを意味しています。今あるのは、不安と絶望。よって、この曲は「希望の唄」ではなく「絶望の唄」というタイトルの方がふさわしいと思います。
福島を破壊し、福島県民を棄民にし、それでも原発を推進する政権を選ぶ国民。「絶望の唄」の「絶望」は、福島だけでなく、日本全体に、そして世界全体に向けられている気がしてなりません。
よいお年を。
【おまけ】
那覇でレンタカーを借りて金武町まで行ったのに臨時休業とは(><)
そりゃないぜの一枚。