Ti-daブログを開けるのは一年振りである。パスワードさえ忘れており、アクセスするのに数回の入力を要した。
仕事がいよいよ忙しく、人生の残りの時間やエネルギーを吸い取られている。ライブ観戦や沖縄に行く頻度がすっかり減ってしまい、焦燥感がつのる一年であった。
年に数度沖縄に行き出して10年以上経つが、今年の多忙な中で、ようやく経験できたことがあった。
「慰霊の日」の沖縄全戦没者追悼式に参加したことだ。
摩文仁の平和祈念公園の式典会場にいると、ちょうど数m先を安倍晋三首相が通り過ぎた。歓迎の拍手に混じって、「ペテン師、売国奴!」という野次が飛んだ。野次の主はすぐに警官に囲まれたが、彼に対してもパラパラと拍手が起こった。
この一年で、世の中は急速に悪化した。沖縄県民が仲井眞知事に鉄槌を食らわせたように、某売国奴首相にも全国民の鉄拳を食らわせねばなるまい。
さて、前置きはこれくらいにして、小生の備忘録を兼ねての2014年ライブ観戦ベスト10を記しておく。
東京などで行われた沖縄関係を含む反戦・反基地イベントや反原発イベント等で、ますますの活躍を見せたのが、大熊ワタルである。彼のメインのバンド「シカラムータ」はジャズ界の多忙ミュージシャンをメンバーにしており頻繁にライブを行えないが、小生は別動遊撃部隊「ジンタらムータ」の演奏を今年数回聴いた。権力に対する怒りをエネルギーにする彼の音楽は本当に素晴らしい。沖縄音楽についての造詣も深い。
後述するように、浪曲師の玉川奈々福や福岡のLILI LIMITも小生にとって印象深いミュージシャンだったが、悪化するご時勢も踏まえ、小生のマン・オブ・ザ・イヤーは、大熊ワタルだった。
【1位】
根路銘利紗(Lisa Oki)
12月5日
@東京・小岩・こだま
21歳の新人がいきなりの一位である。
若い時の与那覇歩を彷彿とさせる歌の勢いも素晴らしいが、MCでウチナーンチュのヤマトに対する逆差別にあえて言及するなど、単なるエンターテイナーに終わらない決意も立派。この先どうなるか、腰砕けになる心配もあるが、飛躍する方にかけて見守りたい。
【2位】
森本真伊子
8月2日
@東京・下北沢・SEED SHIP
世界最大の原発がある新潟県柏崎市の出身。3.11以前のこと、東京に出てきたばかりの彼女を東電は原発の広告に起用し、それに興味を持った小生はライブを見に行った。今回が2度目。3.11を挟み数年の時は彼女を変えた。純真な少女は不倫の曲すら歌うようになった。歌は深みを増し、「柏崎と東京が電気でつながっている。」との無邪気な思いは、強い反原発へと変わっていた。
【3位】
与那覇歩/琉球の宴
6月22日
@那覇市・沖縄県立武道館アリーナ棟
ここ数年、年間10本以上観ていた与那覇歩。今年は沖縄へ行けてないということもあり、4~5本しか見れなかった。そのうちの1本。日出克のイベントで、大観衆(客席にいた仲井眞は余分)に囲まれての堂々たるハワイアン歌唱。もはや小生の応援など誤差のうち。十分にビッグな存在になった。
【4位】
田川ヒロユキ
1月11日
@沖縄市・Koza 7th Heaven
盲目のハードロックギタリスト田川の沖縄ツアーに、紫ファミリー以下オキナワンロッカーが集結。國吉亮のプレーは田川を食っていた。田川の轟音「日本国家」ソロは、ウッドストックでのジミヘンの「アメリカ国歌」を思い出させた。69年にジミヘンが模したのは、ここコザから飛び立ちベトナムを焦土と化した爆撃機B-52の爆音である。
【5位】
ジンタらムータ・エセタイマーズ/Peace on earth
3月9日
@東京・日比谷公園
反戦イベントでの音楽ライブ。小生はこの二組のみ観戦した。梅津和時をゲストに迎えたジンタらムータが「平和に生きる権利」や「怒りの日」でストレートにブチかませば、若手メジャーミュージシャンからなるエセタイマーズは、清志郎のパロディで応戦。バンドの存在はパロディだが、彼らが演奏したCCRの「雨を見たかい」はベトナム戦争の血の匂いが浸み込んだ本物の反戦歌だ。
【6位】
第60回全日本チンドンコンクール
4月5日
@富山市内各所
第60回にして初めて足を運ぶことができた。いかにも富山商工会議所がスポンサーというコンクールそのものよりも、参加者全員による桜満開の松川べり練り歩きが、感動的だった。ジャパニーズグルーブの桜嵐。ここでも期せずして、大熊ワタル氏と奥様のこぐれみわぞうさんに遭遇した。
【7位】
安田登(能)/のう、じょき、ろう!
7月3日
@東京・浅草・木馬亭
浪曲師玉川奈々福は、浪曲師としては終始力み過ぎで聴く方も肩が凝ってしまうが、企画力は特筆すべきものがある。浪曲講座や韓国パンソリとのコラボや、日本の節つき話芸としての能・女義太夫とのコラボなどを企画し、都度メールで案内が来るものだから、小生もいくつか参加してしまった。そのうち、安田登の現代能「夢十夜」(原作夏目漱石)は、息が詰まるような緊張感にあふれていた。
【8位】
LILI LIMIT・KADATH(+Clean of core)
3月1日
@山口県・周南市・rise SHUNAN
山口県にある反原発の島、祝島を訪問した後、ふらりと訪れた地元のライブハウス。若いLILI LIMITとベテランKADATHは、タイプこそ違うが、完成度の高いのプログレバンドだった。その後LILI LIMITはメンバー全員が福岡から東京に移住。5月に新宿に観に行った。彼らのプログレ度は低下していたが、これまた対バンのClean of coreが、Geddy Leeが二人いるような驚きのプログレトリオだった。
【9位】
ZEK3
2月13日
@東京・合羽橋・なってるハウス
小生は地球上のあらゆる音楽を聴くが、結局一番安心して聴ける音楽がこの周辺。フリージャズロック+Zeppelin+剛腕ドラマー本田珠也で外れるわけがない。珠也の直情的なバカスカドラムに直撃されると、小生のドラムの師匠(と勝手に言っている)の外山明の変則性・変態性など、どうでも良くなってしまう。
【10位】
Coopy Ranger(旧Aki&Buzzlight)
1月10日
@沖縄県・金武町・Dream
実は2位の森本真伊子を数年前に観に行った時に、初めて会ったのが、RideaことAki。以来、Aki&Buzzlightが出演するライブハウスがある基地の街金武町に通い詰めた。しかし、今年1月に見たのが最後になってしまった。彼女はRideaとして東京で本格的に活動を始めたのだ。ロックシンガーRideaもいいが、小生はロックボーカリストAkiがもっと好きだ。
【番外】
ベスト10に入れられなかったが、限りなくベスト10に近かったライブの写真を名残惜しく並べておく。
現代の琵琶法師、三上寛
ツインドラムプログレバンド、HAYAKAWA
ENO好きのKbとキュートなVoソネちゃんが素敵な、Atlantis Airport
ゴスペルの女王、森崎ベラ(一昨年の1位、実は今年も隠れ1位)
【総括】
小生は単に商業主義のための音楽は聞かない。ミュージシャンにも生活はあるが、彼らの創造性や生き様の発露が、商業主義に優先しているものでないと、結果つまらないものに聴こえてしまう。そういう意味で、人々の喜怒哀楽に直結している民謡や労働歌の類を小生は好んで聴いてきた。
喜怒哀楽や生活の歌より心を打つ音楽があることが、この歳になり分かってきた。
それは、「祈り」の音楽である。
今年、京都の知恩院でおじいさんが「南無阿弥陀仏」と何十分も無心に唱えているのを聴いて、小生の魂は揺さぶられた。彼の心に去来しているものはなんだろうと思った。一切の虚飾をそぎ落とした素晴らしい調べだった。
慰霊の日の2日前の6月21日にも、平和の礎を訪れた。何人ものオジー、オバーがシートを敷き、何時間も名前を刻んだ石板の前にじっと座っていた。地上戦で親や兄弟を亡くした方々に違いない。
と、一人のオジーが「月桃」のメロディを口ずさんでいるのに気が付いた。小生はその衝撃を忘れられない。それはまさに祈りの歌であった。「月桃」をオジー、オバーの気持ちを知る与那覇歩か根路銘利紗に唄って欲しいものだ。
某売国奴首相には、「集団的自衛権」、「辺野古の新基地建設」などと騒ぐ前に、オジー、オバーが石板の前でじっとたたずむこの光景を見てもらいたい。摩文仁の海の色は、青色ではなく血の赤色であることを心の目で見てもらいたい。
その光景をもたらしたのは、アメリカ人であるまい。ヤマトンチュである。
石板の前の光景が沖縄のみならず、日本全体に、いや、アジア全体、そして世界全体に広がっていくことを心配せざるを得ない。
沖縄は知事選で一矢報いた。来年こそヤマトンチュの番である。