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2011年11月23日

福島原発エレジー

11月6日、震災以降4たび福島に行って来ました。
小生にとって「反原発」「脱原発」は事故が起こるずっと前からのいわばライフワークであり、これからも小生のできる範囲で発信していきたいと思っています。琉球ブログなのにすみません。ネット活動は今はこれしかやってないので、福島ネタもここに書かせてもらいます。

新聞等で最新の放射線マップを見ると、福島市の放射線量は30~60万ベクレル/㎡に色分けされています。
法律では、4万ベクレル/㎡以上が「放射線管理区域」とされています。黄色い下地に放射能マークが書かれた表示を病院(レントゲン)や工場(非破壊検査)で見かけることがありますが、放射線管理区域には、妊婦は幼児は入ってはいけないし、飲食をしてはいけないし、寝てもいけません。中にあるものを外に持ち出すこともできません。そう定められるのが、4万ベクレル/㎡という閾(しきい)値です。

この基準で言うと、南東北や北関東の多くの地域や千葉、東京の一部までが「放射線管理区域」に相当し、寝たり飲食してはいけないことになってなってしまいます。日本の面積の8%が今や「放射線管理区域」になってしまいました。
現在の福島市の放射線量は実にその10倍以上です。

多くの日本人は、冷熱停止目前で原発問題は一段落したと思っていますが、実際はさらに大きな困難がこの先待ち受けています。
メルトダウンした生の核燃料は格納容器を突き抜けています。アメリカのスリーマイルでもロシアのチェルノブイリでもここまで酷い状態ではありませんでした。どうやって除去したらいいのか、そもそもどこに核燃料が解け落ちてしまったかも調べようがありません。
今日の新聞にも、これまでに海に流出した放射性物質が東電発表の数十倍になるとの記事がありましたが、地震でヒビが入っているであろう貯水槽のコンクリート壁からは、さらに桁違いに大量の放射性物質が地下水や海洋中に流れ出す心配があります。
早く原発の下に地下ダムを築くべきなのですが、それとて大量の放射線が危険すぎて、作業に取り掛かれない状況です。政府は30年で処理を終えると言っていますが、科学的根拠は何もなくて、100年以上の途方もない仕事になるかも知れません。

海洋汚染や食物汚染は、東北だけではなく日本全体の問題としてこの先どんどん悪化いくと予想されます。放射線に対する感受性の高い子供達にはせめて安全な食物を与えて、我々以上の世代が汚染食物を食べていくしかないと思われます。
こういう事態を、小生も含めて(=微力ですが)多くの人が予想して警鐘を鳴らして来たのに、事前に止められなかったのが残念でなりません。欲ボケしていた東電や国の責任はきわめて重く、国民総負担の共同責任論に行く前に、彼らの責任をしっかり追及せねばなりません。


小生としては、少しでも福島経済に寄与すべく、宿を取って福島のライブハウスC-moonに足を運びました。この日は「Moon Light Mile」と銘打ったイベントで、地元のアマチュアミュージシャン3組と、東京からプロのDouble Masaki(川上真樹×関雅樹)を招いてのライブがありました。

最初に登場したのが、弾き語りフォークシンガーの片平里菜ちゃん。実は前回福島を訪れた時に200円で彼女のCDを買ったのが、今回このイベントに来た直接的な理由なのでした。
緑色のトレーナーにジーンズの素っ気ない格好。少女のあどけなさを残す19歳。作曲やギターのプレーは発展途上と言ったところですが、キャラクターや声の質、歌の瞬発力は特筆すべきものがあります。さしずめダイヤの原石と言ったところでしょうか。
この年頃に多い恋愛ソングはほとんどなく、社会からの疎外感を歌った曲が多いように感じられました。素直そうな外観ですが、内面は屈折しているかも知れないと思わせ、それがまたシンガーとしての彼女の魅力になっています。

彼女の作った一曲に「World」という歌がありました。
これもまた思春期の所在のなさを歌った曲で、全部は聞き取れなかったですが、こんな歌詞でした。

「この世界に子供の居場所はどこにある。
 小さな部屋の寝つけない夜に聞こえるSOS。

 責め続けたって見えなくて、逃げ隠れしたって
 小さくて弱い自分は、何も変わりはしない。

 in the world
 嘆いたって、
 my world
 ここが居場所さ。

 in the world
 ここから始めよう。
 my world
 きっと大丈夫さ。」

この曲を聴いて、ハッとしました。
原発事故の前に作った曲でしょうが、放射線が飛び交うこの福島で暮らす少女の、ある種の決意に聞こえたからです。悲壮感を含んだ歌声に、小生は思わず涙してしまいました。

福島原発エレジー


福島原発エレジー


次に登場したのが、30代の男3人組の「さわやか革命」。
ロック史に燦然と輝く名アルバム「Aja」を出した「Steely Dan」の3rdアルバムの邦題から名前を取ったこのバンド、これだけで、高度な音楽性とひねくれ度を連想させます。
ところがドッコイ。出音は硬派の70年代ロック。
スーパーソリッドなドラムに、バカテクのギター、そして、あくまで渋い存在感のベース&ボーカル。
小生にとってはツボです。
特に凄いのは、無駄な音は一切出さずに超強力なリズムをたたき出すドラムに乗っかる、ギターの壮絶なアルペジオプレー。東京でもこんな強烈なカラミを見たことがありません。なかなか個性的なバンドです。

そして、歌詞の内容は、片平里菜ちゃんとは対照的に、メメしいラブソングが多いこと。失恋シング3連発の間にギターの「ウルトラ先生」が「昨日結婚しました!」と発表。
小生、これも原発がらみで感心しました。
放射線の影響を危惧して、福島県の出生率が前年比25%もダウンする中、ウルトラ先生はここで新しい生活を始め、(場合によっては)子供も作ろうというのです。里菜ちゃんの歌詞じゃないけど、「嘆いたってここが居場所」なのです。
その心意気やよし!!拍手を送ります。

福島原発エレジー


福島原発エレジー


3番目に登場したのが、福島でラジオ番組も持つ地元の人気バンド「∞Z(zero zero Z)」。キュートな23歳、エリカちゃんがギター&ボーカルを担当する3ピースバンドです。これまた超個性派。
ドラムがはっきり言ってやりすぎ。手数が多すぎて、アンサンブルとしてはくちゃくちゃ。キメも微妙に外してます。
ベースはスラップ多用のファンク系というよりフュージョン系。3人の中では一番まともなプレーヤーです。でも、ハネ系のドラムとベースは総じて気持ち良くて、Judy&marryのリズム隊を彷彿とさせます。
議論が分かれるのはエリカちゃんですね。まず断っておくと、小生としては大好きなキャラです。ショートの金髪に、太ももがあらわな赤いワンピース。テレキャスを抱えた姿がとてもシーセクです。MCで一言発するとさらにパーッと輝くタイプです。太くて少し鼻声の声質も特徴的でグーす。
しかし、ドラムがうるさい中、モゴモゴした歌い方は、PAから声が突き抜けない。音も外れ気味。ギターのプレーも発展途上です。
でも許す!!ミュージシャンは個性が第一ですわ。
バンド全体から発散する強烈なキャラに、ご機嫌な楽曲。これを武器にどんどん進化して、東京事変みたいな個性派バンドになることを期待しましょう。

ブログをちょっと覗いたら、感動的な記事がありました。震災後のブログ再開一発目3月22日の記述です。

「 こんにちは!!絵里加です。報告が遅れてごめんなさい><
みなさん、地震は大丈夫でしたか???
みなさん、ご無事ですか??
怖かったですね・・・!!日が経つにつれて、被害の大きさが明らかになり、本当に恐ろしい災害だったと実感します。
自分たちも一被災者ですが、本当に多くの被災者の皆様にお見舞い申し上げます。そして、たくさんの尊い命が失われたこと本当に無念でなりません。お亡くなりになられた方々に心からお悔やみ申し上げます。

∞Zのメンバーは幸い、全員無傷でした。
(中略)
今は福島市内に残っています。
放射線の数値も徐々に下がってきているし、科学的根拠もわからない一般市民の私たちにとっては、何を信じたら良いのか正直わからなくて戸惑うけど、放射能に負けてられるかっっ!!と毎日闘っています!!
とはいうものの、大事をとって、ちゃんと予防できることはしましょう。
マスク装備するとか、外出後はシャワーあびるとか。
福島市街を歩いても、道行く人がみんなマスク装備してます。マスクない人はあげるから、言ってね!!
(中略)
あと、お風呂に入れない人、家使えますので言ってください!!大町にお家ありますので!!
そうやって、助け合いましょう。

とにかく私たちは音楽でみんなを元気にすること!!
今はそれが自分の使命だとおもいます!!
みんなまずは身体に気をつけてくださいね。
元気でいれば、必ず未来は明るいから!!
そう信じて、一緒に頑張っていきましょう!!」

福島のあの時の状況とエリカちゃんの誠実な人柄が伝わり、胸を打つ記事です。そうやって∞Zを聴くとますますキャラ的に好感が持てるのです。

福島原発エレジー


福島原発エレジー


福島原発エレジー


トリに出てきたのは、ボーカルの川上真樹氏とギターの関雅樹氏によるユニットDouble Masaki。申し訳ないですが、今回唯一プロのお二人は評論に値しません。
上手いことは間違いないでしょうが、「こうやって歌えば、こうやって弾けば、聴衆が上手いと思うに違いない。」という意図が見え見えの、もったいぶった予定調和の演奏なのです。ハイトーンだけれど、細くて苦しそうなボーカルに、本当に上手いのだろうかという疑問すら感じました。

震災で亡くなった方に対する弔いも口にせず、東京で揺れを感じた自分のことだけ喋って、「こういう状況でこの歌が勇気をくれました。」と言って歌った曲が、エリック・クラプトンの「Tears in Heaven」。
不慮の事故で亡くなったクラプトンの息子を弔った歌とはいえ、「(不倫の末できた息子であり、)生前ほとんど会うことができなかったけれど、天国ではお父さんの名前くらい覚えているだろうか。」という趣旨の歌詞なのです。
震災による2万人の死と、ある意味不倫の苦悩の歌を一緒にするのは、いくらなんでも無思慮と言ってもいいでしょう。

さらに、今回の東北ツアーのために作ったというオリジナル曲「闇を超えて」では、空虚な言葉を並べた後のサビの歌詞が、
「信じることなんてここにあるとは
 言い切れないけど、Never give up。
 言い切れないけど、生きてくれよ。」
ですって!

「言い切れないけど、Never give up。言い切れないけど、生きてくれよ。」という無責任な言い草を聞いて、小生は怒りがこみ上げて来ました。
里菜ちゃんが「嘆いたってここが居場所」と歌い、ウルトラ先生がこの地で新しい結婚生活を始め、エリカちゃんが「助け合いましょう。一緒に頑張っていきましょう!」と希望の光を投げかけているのに、それらを目の当たりにしながら「言い切れないけど、生きてくれよ。」との傍観者的な無責任発言はなんだ!!!みんなここで生きてくって決意を表明しているでしょう。
被災者に対する思いやりの言葉も、みんなが不安におののいている原発に関する発言もないし、この二人には東北ツアーをやる資格なし!無思慮にもほどがある。ヒドすぎるぜ。


おそらく今日のライブチャージ3000円はほとんどが彼らのギャラになることに気がつき(5杯ぐらい追加オーダーをしてますが)、これでは福島の活性化につながらないと思い、怒りとともに即座に席を立ち、別の飲み屋に行った小生なのでした。
あー、不愉快だった。




でも、前の3組は痛快でした。
一緒に頑張ろうぜ!!






言い切れないけど。





(試しに使ってみました。)

福島原発エレジー


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Posted by 猫太郎 at 13:41│Comments(2)音楽全般
この記事へのコメント
はじめまして! @Takashi156と申します。
私も片平さんの曲が好きなので、こちらのblogにコメントをしました。

あと、片平さんの曲、『WORLD』の歌詞を載せておきます。
http://ameblo.jp/ajt0dmwrina/entry-11038975953.html
Posted by @Takashi156 at 2011年11月24日 23:22
>Takashi156様

場末のブログにお越しいただき、深謝申し上げます。
片平里菜ちゃん、声もルックスもいいですね。
でも、ギター一本では曲のバリエーションに限界があるので、強力なバックバンドがついたらいいのにと思いました。例えば、さわやか革命さんとか。

worldの歌詞もありがとうございました。
核心部分はおおむね聞き取りができていて、趣旨を曲解していなくて、安心しました。
Posted by 猫太郎猫太郎 at 2011年11月25日 08:56
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