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2011年05月02日

東風平高根ライブレポ「嘘をついているのは誰だ」

震災、原発事故以来、小生のブログ更新は滞りがちになってます。
震災により、3万人近くの方々が亡くなったり行方不明であったり、今なお十万人以上が避難所で不自由な生活を余儀なくされている現状において、あまり浮ついたことも書けないと思い、ライブレポであっても、震災がらみ、原発事故がらみの内容のみを綴ってきました。

我々もそろそろ日常を取り戻さなければなりません。それが、社会全体が負のスパイラルから脱する第一歩かと思います。
少ないながらも、小生のブログ更新を期待する人からの応援メッセージもいただきました。小生、この間、密かに数本のライブを見てきましたが、これらには、今年のライブ観戦ベスト10に入るのが確実と思われるトンコリ奏者のOKI、Mull house、広木光一氏らのライブも含まれています。上述の理由でライブレポを自粛気味でしたが、月が変わったのを機に、通常の内容に戻したいと思います。
とはいうものの、最後のあがきをします。今回は震災・原発事故関連の総括として、やや古いネタながら、4月の頭に京都・大新で観た「東風平高根」のライブレポをお届けしたいと思います。


この日は、ライブを観るためでなく別の用事で京都に行ったので、愛用のカメラもメモ帳も持たずに、ふらりと大新を訪れました。東風平氏は、東京に活動の拠点を置いているため、都内のライブハウスや民謡居酒屋でよく名前を見かけていましたが、生のライブを観るのは初めてです。
東風平は首里生まれ。20才で上京して、様々な音楽活動をしながら、現在40才。キャリアが長いので、酔っ払い相手のライブパフォーマンスは、ツボを押さえて手馴れたものです。持ち歌はほとんどが耳当たりの良いオリジナル。彼のパワフルなキャラクターを前面に出しながら、沖縄テイストを加えた万人受けするポップスをガンガン歌います。

一方、MCも真骨頂。一発ネタではなく長尺のストーリーネタが得意です。どの話も面白かった記憶がありますが、いつものメモ帳を忘れたため、詳細を覚えておりません。最も印象深かったネタをひとつ紹介しましょう。

30年前、東風平氏が小学校時代の話です。クラスの窓ガラスが何者かによって割られました。激怒した先生は、授業をストップして、誰が割ったのか一人一人に問いかけて行きました。誰もが「割ってません。」と答えました。誰かが嘘をついています。
先生はクラス全員に対し、机の上に両腕を置きその上に顔を伏せるように命じました。そして、「誰も見てないから、窓ガラスを割った人は、そっと手を挙げなさい。」と言いましたが、誰も手を挙げませんでした。授業は一切行われず、休み時間を挟みながら、その姿勢で一日が経過しました。そして、2日目も同じ状態で緊張の時間が経過しました。
3日目に、先生はフェイントをかけました。「窓ガラスを割っていない人は、手を挙げなさい。」

東風平少年、この時ぼんやりしていて、先生が逆の問いかけをしたことに気が付かず、一人だけ手を挙げませんでした。先生は彼を職員室に呼び、こんこんと説教をしました。訳のわからない東風平少年はただ号泣するばかり。ようやく開放されて、教室に戻った時、同級生の喜屋武実君が、泣きながら寄ってきて、「ごめん。実は僕が割ったんだ。」と東風平少年に謝ったといいます。


数日後、小生は、40年前に製作された福島第一原発一号機のPRビデオをNHKで見ました。そのビデオの中では、白黒の映像と共に以下の様に語られていました。
「原発には何重にも安全対策が施されており、外部に放射能が漏れることは絶対にありません。原子炉は五重の容器で囲まれており、建物はコンクリートでできた壁の厚さが2mもある頑丈な構造です。また、防波堤により津波からも守られています。」
画面には、ぶ厚い壁や津波の実験モデルが映し出されていました。

ふ~ん。「放射能が漏れることは絶対にない」ってか。
格納容器や圧力容器は壊れたよな。2mのコンクリート壁もチェルノブイリのような核爆発でなく、原始的な水素爆発で簡単に吹っ飛んだよな。津波は防波堤を越えたよな。

一体、嘘をついたのは誰だ!
電力会社か、機械メーカーか、政府か、特定の政治家か、役人か、学者か、それともNHKか?
嘘をついた人は、正直に挙手して下さい。

原発の地震、津波による事故の危険性についてはこれまで、いろんな人が指摘してきました。例えば、地震学の権威で東大名誉教授、元地震予知連会長の茂木清夫氏は2004年に、こう言っています。
「原発がM8級の巨大地震に直撃されたことは、世界的にも一度もない。M7級でさえもありません。そして、仮定を積み重ねたシミュレーション通りに地震が起きる保証もありはしないのです。(中略)これまで測定器の不備などで見えなかった地震の性質が次々と明らかになっている。」

地震予知連会長がこう発言していることから考えても、原発に関わる人全員が、今回の事故など想定内だったのではないですか。
みんな、想定外と嘘をついているのではないですか。
原発を作れば作るほど、儲かる仕組みの電力会社や機械メーカーは、ひたすら建設したいですね。でも、コストが上がっては儲けが少なくなるから、100年に一度の災害の対策など盛り込めませんね。自分の定年まで事故が起きなきゃいいやと思ってませんでしたか。
学者の先生方は、ポストと研究費に目がくらんで、都合のいいことばかり言いませんでしたか。
政治家の皆さんは、今さら言うまでもなく、利権と賄賂により、原発の建設を推進しませんでしたか。国民には「原発はクリーンエネルギー」とかいい加減なことを言って。どこがクリーンですか!!


最近の構図を見ていると、大体以下のような言い訳がなされています。
電力会社、機械メーカーは、「国の安全基準に基づいて設計、建設した。」(よって、責任は国にある。)
国(政府、役人)は、「過去の事例を研究している地震学者の見解に基づいて、安全基準を決定した。」(よって、責任は、地震学者にある。)

一方、その地震学者が、こう発言している記事を見つけました。(4月14日 読売新聞)
「東大のゲラー教授は、(中略)大地震の前兆をとらえて予知することは世界的に見ても不可能で、地震の基礎研究は研究者による幅広い議論によって再構築していくべきだと主張している。」

ですって。電力会社→国→学者という流れにおける責任の所在は、結局曖昧になってしまいました。どこでどれくらいの大きさの地震が起こるかの予想が不可能なら、安全基準の設定はできず、どこにも原発は作るべきではないでしょう。

そして、おとつい菅首相がこう発言している記事を見つけました。(4月29日 読売新聞)

「菅首相は29日午前の衆院予算委員会で、東京電力福島第一原子力発電所の事故について、「一義的には東電に責任があることは言うまでもないが、原発を推進する立場で取り組んできた国の責任も免れるものでない」と述べ、国の責任を認めた。」

原発事故に関して、国にも責任もあるというのは、当然でしょう。しかし、小生は、その次に、こういう論理のすり替えが行われることを危惧しています。
「国の政治家は、国民が選んだ。国の責任とは、すなわち国民の責任である。よって、原発事故は国民の責任である。結論として、国民が責任を負うべし!」
税金(消費税アップ?)と電気代によって、一企業が引き起こした事故の代償を国民が払わなければならないことは、もはや避けようがありませんが、その前に、本当の責任はどこにあるのか、誰が嘘をついていたのか、せめてこれだけは明らかにして欲しいと切に願っています。


東風平氏のMCに続きがあります。
数年前に行われた小学校の同窓会で、東風平氏は喜屋武君に25年ぶりに会いました。
東風平氏は、喜屋武君に窓ガラス事件のことを懐かしい思いで話しました。ところが、なんと、東風平少年が大きな心の傷を負ったあの事件を、喜屋武君は全く覚えていなかったのです。同級生も覚えていなかったらしいです。25年間忘れずにいたのは、トラウマ(心の傷)をかかえて生きてきた東風平氏ひとりだったのです。


原発事故も結局こういうオチでしょうか。
25年後、なお残る放射能汚染、および税金と電気代アップに苦しむ国民を前に、国と電力会社は、こう言うに違いありません。
「25年前の事故(事象)はともかく、現在では原発の安全対策は何重にも確保されています。原発の外部に放射能が漏れることは絶対にありません。」

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