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2011年02月27日

与那覇歩ライブレポ「高峰山の麓にて」

関西遠征続きの与那覇歩さんですが、2月19日は小生が那覇の金城まで足を運びました。
ボトルキープもしており自分では常連のつもりが、2回連続で予約が通っておらず、最前列の席を確保できませんでした。いつも騒ぐし、ボトルキープも一番安い「三日麹」だし、動画を撮っていてマスターにこっぴどく叱られたし、お得意さんではなく、逆にブラックリストに名前が載っているのかしらと思いながら、最前列の一人客のテーブルに相席をお願いして、席をゲット! へへへ、得意技です。

1st setは、「てぃんさぐの花」「十九の春」「涙そうそう」「ひやみかち節」と有名曲を並べて、ウォーミングアップ。
満席になった2nd setでは、「花」「島唄」のメガヒット曲の間に、歩さん十八番の八重山民謡4曲をはさんで、アクセル全開状態に。
3rd setは、得意の「ファムレウタ」「童神」から始まり、「いつまでも沖縄」「バイバイ沖縄」などのメリハリの効いた曲をつないで、「ラブ注入(by 楽しんご)」を織り込んだ「カチャーシー」で狂乱状態に。

今回も素晴らしい唄と楽しいパフォーマンスを堪能した小生なのでした。【写真1~5】
金城では比較的冷静に計算をしながらパフォーマンスを行っている歩さんですが、「なだそうそう」や「いつまでも沖縄」など抑え気味の歌唱もいいですね。思わず「うまい」とヒザを打ちたくなります。お客にいつもいつも「おお、凄い!」と言わせるのではなく、「うまい」とか「いいね」とか「こりゃまた、粋」などと言わせるのが、名人芸。美空ひばりの芸域に近づかんかなという歩さんであります。

恵美さんの満面の笑顔と、これまで見た中で最強のハシャギぶりもライブレポの特筆ネタとして取り上げる価値ありですが、これはまた次の機会に譲るとしましょう。
今回の主役は、謝花綾乃さんです。小生の与那覇歩ライブレポシリーズで、歩さん以外が主役になるのは初めてのことです。拍手!
というのは、皆さんお気づきでしょうか?先月綾乃さんのギターが新調されていたことを。小生は、一聴して分かりましたよ。明らかに倍音が増え、アタックもサスティーンも強くなっています。力強さも繊細さも持ち合わせたクリアでシャープな音色です。金城はPAとEVのスピーカーがいいので、かなりいい音で響いていました。

目を凝らして、ヘッドのロゴマークを見ると「Takamine」と書いてあります。【写真6】
おお、「Takamine」ですか!
名前の由来になっている高峰山は、岐阜県の東にある標高945mの山で、それほど高くはないけれど、裾野が広い単独峰なので、あのあたりではひときわ目を惹く山です。【写真7=雲がかかってますが】

今日は、一見沖縄や歩さんと関係がないように思える高峰山の麓の物語を書きます。
「Takamine」ブランドのギターを作っているのは、高峰山の頂から見て北東の麓にある岐阜県中津川市坂下町の高峰楽器製造所です。【写真8~9】
伊勢湾台風のため1959年に名古屋からこの地に引っ越してきた創業者が、木曽の木工職人達を雇って、ギター工房を設立しました。1960年代~70年代前半にかけては「エリート(Elite)」、「ナッシュビル(Nashville)」等のブランドで、クラッシックやフォーク(まとめてアコースティック)ギターを製造していましたが、1979年、「Takamine」ブランドに集約し、日本初のエレクトリックアコースティック(以下エレアコ)ギターを発売しました。

アコギにマイクを取り付けるだけでは、大音量を得ようとするとハウリングが起こってしまうため、ブリッジにピエゾ素子(=振動を電気信号に変える圧電素子)のピックアップを取り付けるという独創的な技術を用い、アコースティックな音色とハウリング防止を両立させました。そして、先発メーカーが思いつかなかったバッテリー一体型のプリアンプをマウントするという音質維持のための技術も駆使して、ミュージシャン達の熱狂的な支持を獲得したのでした。
岐阜の山奥から、日本中のみならず、世界中のミュージシャンに向けてギターが出荷されているとは、なかなか痛快なことではありませんか。
Takamineのエレアコを使っている有名ミュージシャンは、以下の通りです。氷山の一角ですが。

  ・長渕剛
  ・さだまさし
  ・福山雅治
  ・南こうせつ
  ・松山千春
  ・佐野元春
  ・前田亘輝(TUBE)
  ・押尾コータロー
  ・小渕健太郎(コブクロ)
  ・TAKURO(GLAY)
  ・北川悠仁(ゆず)

  ・ジョン ボンジョビ
  ・グレン フライ(イーグルス)
  ・アヴリル ラヴィーン
  ・リンキンパーク
  ・ジョン スコフィールド
  ・ブルース スプリングスティーン
  ・デイブ スチュワート
  ・ダリル ステューマー(ジェネシス)
  ・ジョン ウェットン(エイジア)
  ・ナンシー ウイルソン(ハート)
  ・トッド ラングレン

イーグルスの「ホテルカリフォルニア」のあの有名イントロは、典型的なTakamineのエレアコの音です。あのイントロをレコーディングするために、スタジオには数十本のTakamineエレアコが並んでいたそうです。

エレアコというと、「オベーション」という世界的にもっと有名なメーカーがあります。オベーション社がエレアコを売り出したのが、Takamineの10年前です。基本的にはアコギ+マイクの構成ですが、ボディが通常のアコギのように、平行の2枚の板から成っておらず、ボウル・バックと呼ばれるFRP(繊維強化プラスチック)製の丸い形になっており、その形状により音を表板のサウンドホールに集中させ、増幅してもハウリングを抑える構造になっています。
世界初のエレアコだけあって、ミュージシャンへの浸透度も高く、以下のような人たちが愛用しています。

  ・尾崎豊
  ・浜田省吾
  ・Char
  ・LOVE PSYCHEDELICO
  ・天野清継
  ・石川鷹彦
  ・ASKA

  ・アル ディメオラ
  ・ジョン レノン
  ・スティーブ ルカサー
  ・ポール サイモン
  ・ロバート フリップ
  ・ラリー コリエル
  ・ジョン マクラフリン

小生の好きなフリップやマクラフリンやディメオラが入っており、レノンやポール サイモンの超ビッグネームもいて、愛用者番付だけでいうと、こちらの勝ちですね。しかし、小生の価値観では、オベーションを使ってはいけない理由があります。ましてや、綾乃さんには使ってほしくない理由が。

これを説明する前に、綾乃さんの持つTakamineに小生が、ただならぬ興味を持ったもう一つの理由を述べます。
以前のMCで、綾乃さんが高峰山の南の麓、中津川市内に住んでいたと知っていました。
岐阜の山奥に世界的なギターメーカーがあること自体が奇跡的なのに、これまでの人生のほとんどが沖縄暮らしである綾乃さんが、偶然にもその地に住んでいたなんて、奇跡の二乗というしかありません。
遠い沖縄の地で彼女が抱えるギターのロゴ「Takamine」は、彼女が実際に仰ぎ見ていた高峰山のことなのです。

綾乃さんが中津川に住んでいたのは3年前。どうしても一度沖縄から出たくて、親に頼み込んで、期間限定で中津川の会社に就職しました。
綾乃さんがその期間をどう過ごしたか、詳しいことを小生は知りません。しかし、彼女自身の口から「楽しかった。」とか「あちこち行った。」とか「寮でもギターの練習をしていた。」とか聴くと、青春を謳歌していたは想像に難くありません。
沖縄の海の風景とはまた別の趣を持つ山の風景。
朝日、夕日。新緑、紅葉、雪景色。様々な鳥や獣。猿や狐や熊も。四季折々の花、虫達。
古くから人々が往来してきた中山道の宿場町。歴史の重みや人々の優しさも格別です。
沖縄と全く違う環境に身をおき、驚き、戸惑い、時には泣きながらも、自然や社会や人生の普遍性を感じ取っていたことでしょう。【写真10~13】


綾乃さんのギターのプレーは、堅実そのもの。ギミックやハッタリはありません。時々ハーモニクスやミュートなどの小技は出しますが、基本は8のアルペジオとストロークプレーであり、火の出るような16のカッティングやソロはありません。いつも譜面と歩さんのアイコンタクトを確認しながら、バッキングに徹しています。
全然OK。ノープロブレムです。
希代の唄者歩さんをしっかり支え、それによって綾乃さん自身の実直さも醸し出し、潔く爽やかでもあります。MCやコーラスもかなりご機嫌です。恵美さんと二人で、味のある助さん、格さんぶりを発揮しているなあといつも思っています。

綾乃さんには、木曽の自然と木工職人の魂を吹き込んだTakamineのギターが似合います。
高峰山の麓に住んでいたこともあるでしょう。彼女が好きなミュージシャン、ゆずとアヴリル・ラヴィーンが愛用していることもあるでしょう。(これって偶然?)音質が硬く三線の音と相性がいいこともあるでしょう。

逆説的ではありますが、もう一つの大きな理由として、世界最大のエレアコメーカー、オベーション社のギターは、沖縄のミュージシャンには絶対に似合わないことを挙げておきましょう。
オベーション社の創業者チャールズ・カマンは、ヘリコプターを製造するカマン・エアロスペース社(以下CA社)の創業者でもあります。ヘリコプターのブレード(羽根)を作るFRPの技術を応用して、ギターの製作に取組んだのです。それが、オベーション社のエレアコです。
オベーション社の兄弟会社であるCA社のヘリコプターが今なお沖縄の基地に配備されているかどうかは調べ切れませんでしたが、少なくともベトナム戦争、イラク戦争では、「ハスキー」「シースプライト」と言ったCA社の機種が、沖縄に配備され、アジアの民を殺すために「活躍」していたことは間違いありません。【写真14=普天間飛行場のヘリコプター】

音楽と戦争は本質的に相容れないものです。綾乃さんには、オベーションに持ち替えることなく、ずっとTakamineのエレアコを片手に、音楽の高い峰を登って行って欲しいと、小生思っております。【写真16】

与那覇歩ライブレポ「高峰山の麓にて」


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この記事へのコメント
ブラックリストだなんて、そんな事ないですよ!いつもありがとうございます♪
高峰楽器愛用者凄く多いですね♪世界の高峰ですねV(^-^)V
Posted by 早田 at 2011年03月07日 11:55
>早田さん

どもです。
川上屋の写真、懐かしいでしょ?
あとは、栗きんとん賞味期限4日の壁をかいくぐって、小生がどうやって運び屋をするかですね。
今月は羽田から行くからちょっと無理。GWは奄美に寄ってから行くからちょっと無理。
ん~。今年中にはなんとかお届けします。

それで思い出した!
先週腐らないものを送ったのですが、お手元に届いてますか?
Posted by 猫太郎猫太郎 at 2011年03月07日 21:51
猫太郎さん、写真ありがとうございました
11日の金城ライブの時にしっかり受けとりました
実家にも手紙と一緒送りたいと思います
ちょうど、受け取った日は地震がありなかなかすぐにお返事かえせずにごめんなさあ

猫太郎さん、猫太郎さんや猫太郎さんの周りの方々はご無事ですか?

今回の災害で亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると共に一人でも多くの方々の生存、安全を沖縄から願っています!
節電、募金等の出来ることをしていきます!
Posted by 早田 at 2011年03月15日 13:03
>早田さん

身辺あわただしく、返事が遅れてすみません。
小生は大丈夫ですが、社員の家族は行方不明の方もいます。会社の工場も被害を受けています。

今日は沖縄に行って、早田さんの歌声を聴く予定でしたが、出張禁止令やプライベートでも外出自粛があり、結局行けませんでした。

早田さんまで気落ちせずに、いつもの元気と満面の笑みをふりまいて下さいね。そういうことの積み重ねが、復興の第一歩と思います。
Posted by 猫太郎猫太郎 at 2011年03月19日 20:14
 
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